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The Thing 1982

SFホラー映画「遊星からの物体X」と原作「影が行く」

1982年映画「遊星からの物体X」は、1951年の映画「遊星よりの物体X」のリメイクというよりも、原作となったジョン・W・キャンベルによる1938年の短編小説「影が行く」の忠実な映像化となっています。「通信機能が麻痺してしまった南極越冬基地」という閉鎖空間において、「誰が人間ではないのか、自分が獲り込まれたのかすらも分からない緊迫した状況下における、隊員達の心理状態と難局を打開しようとする姿」を描いています。原作と大きく異なる部分は「物体の形状」「登場人数」「物体を退治する方法」などです。ジョン・カーペンター監督による名作SFホラー映画です。

The Thing 1982
The Thing (1982 film) / Wikipedia

カーペンター監督は、4歳の時に観た1951年映画「遊星よりの物体X」が強烈な印象で、映画製作を目指すきっかけになったと語っています。映画史の古典の理解とそのオリジナリティ溢れる解釈で、当時の観客の想像をはるかに超えた数々のクリーチャーを創造し、従来の侵略物にはなかったショッキングな演出により、その名を世界中に知らしめました。

物体Xは、細胞単位で生存し、あらゆる生物を同化する「物体」の姿を、ありふれたモンスター的なデザインとはせず、地球上の様々な生物やその一部の形状を混ぜ合わせた形容しがたいグロテスクなものを創作しています。CGによるVFXが全盛の現在においても、全く見劣りしないリアリティーを与えた当時22歳のロブ・ボッティンの造形は、後のSFX(Special Effects)やクリーチャーデザインに多大な影響を与えています。小屋の中で「物体」に変容する犬については、1982年初頭までデザインも決まっておらず、時間的な都合からスタン・ウィンストンの率いるチームによって製作されています。

2011年「遊星からの物体X ファーストコンタクト」は、1982年の映画「遊星からの物体X」の前日談を描いています。本作に登場する「物体」の表現には、アニマトロニクスや操演、着ぐるみをベースに、それらを補完する形でCGによるVFXが利用されています。描写も登場人物も原作に通じる要素はごく僅かになっています。

1938年に発表されたSF短編小説「影が行く(Who Goes There?)」は、地球に飛来した異星生物と人類が閉鎖空間で繰り広げる対決を緊迫した筆致で描かれています。小説内の怪物はあくまで擬態能力を持つのみで、その正体は「赤い目が三つあり、牙を剥き出し、四本の手を持ち、指は七本あります。青い鱗に覆われ、頭部には髪の毛のように蛆虫状の触手が生えている」異形の人型として描写されています。

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