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ディアトロフ峠事件のスラブ雪崩のメカニズムと外傷の解明

ディアトロフ峠事件とは、1959年2月2日の夜、当時のソ連領ウラル山脈北部で雪山登山をしていた男女9人が不可解な死を遂げたことで知られる事件です。今回、Alexander Puzrin氏とJohan Gaume氏は、登山者たちがテントを設置した環境条件下で発生するスラブ雪崩(Slab avalanches)の分析モデルを提示、また雪崩によって生じる可能性の高い外傷の三次元数値シミュレーションを示して、それが検死報告書と一致していることを明らかにしました。

Using science to explain the mysterious Dyatlov Pass Incident / EPFL(YouTube)

当時の調査では、一行はマイナス30度の極寒の中、テントを内側から引き裂いて裸足で外に飛び出したとされています。遺体には争った形跡はありませんが、2体に頭蓋骨骨折が見られ、別の2体は肋骨を損傷、1体は舌を失っていました。さらに何人かの犠牲者の衣服から、高い線量の放射性物質が検出されています。

当時のソ連の捜査当局は「抗いがたい自然の力」によって9人が死に至ったとして、事件後3年間にわたって、スキー客や探検家などが事件の発生した地域へ立ち入ることを禁じました。遺族の要請などに基づきロシア検察当局は2018年から事件を再調査、2020年7月に「雪崩が原因」としました。この結論に遺族は納得していません。

Fig. 5: MPM simulation of the dynamics of a snow-slab avalanche and its impact on a human body. / Johan Gaume & Alexander M. Puzrin(nature)

EPFL雪崩シミュレーション研究所(SLAB)の Johan Gaume教授と、チューリッヒ工科大学(ETH Zurich)Alexander Puzrin教授は、「ロシア検察当局の雪崩が受け入れられない理由の一つは説明を提供していないこと」として、二人の科学者はスラブ雪崩のメカニズムを提示しました。また、一部の犠牲者で観察された胸部と頭蓋骨の損傷については、外傷の三次元数値シミュレーションを示して説明しています。

男女9人の一行は雪の斜面を切り落してテントを設営していました。チームメンバーも気付いていなかった地形の特徴により、テントから上り坂に風により雪が積もってスラブ雪崩を起こしたと説明します。二人の科学者は薄着の遺体、放射線の検出など、事件のすべてが解明された訳ではないと語っています

1959年2月26日、救助隊が発見したテントの光景。テントは内側から切開されており、一行のメンバーたちは靴下や裸足でテントから逃げ出していた。/ Wikipedia

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