11月28日、米コロンビア大学(Columbia University)のトウ・センター・フォー・デジタルジャーナリズム(Tow Center for Digital Journalism)は、「Post-Industrial Journalism(工業化時代後のジャーナリズム)」と題する大規模な研究レポートを発表、デジタルジャーナリズムを学ぶプラットフォームを公開しています。
- Studying digital journalism, platforms, and publishers(towcenter.columbia.edu)
テクノロジーの進歩により、入手可能な情報量が爆発的に増え続けるなか、それに伴う経済変化がジャーナリズムにも正負両方の影響をもたらしていると述べています。
社会を変えるような重大事件として
1.児童に対する性的暴行の容疑者をかくまうカトリック教会の実態。
2.米エネルギー企業エンロン(Enron)の不正会計事件。
3.米司法省のおとり捜査にまつわる不祥事。
この3事件を例に挙げて「真実を告げる者、意味付けをする者、解説する者」として記者の役割、そして「我々には、(ある特定の人物や団体にとって)報道されたくないことを伝える記者が常に必要だ」としています。
メディアの変化に伴い、広告に支えられる新聞や放送ジャーナリズムのあり方は大きく変わり、それは同時にニュースの生産コストが安くなることも意味しており、米国では特に地方のニュースの質が落ちるとも予測、しかし一時的とも述べています。
また、研究レポートではソーシャルメディアやブログ、クラウドソーシングなどの登場が、これまでの報道では不可能だった部分にプラスの影響を与えていると指摘しています。
その例として、国際テロ組織アルカイダの最高指導者ウサマ・ビンラディン(Osama bin Laden)容疑者の殺害が最初に報じられたのは、作戦を目撃したパキスタン人のツイッター(Twitter)投稿だったことや、2011年の東日本大震災による地震や津波の被害の全体像をより提供したのはソーシャルメディアだったことを挙げています。
経済的に機能させる鍵は「柔軟性」として、「収入は広告主、提供元、後援者、慈善家などからもたらされうる。コスト削減は提携、業務委託、クラウドソーシング、自動化などによってもたらされうる。答えは一つではない」としています。利益単価の低いオンライン報道への移行によって新たなモデルが模索されるとしています。
一例として挙げられているのは「ハフィントン・ポスト(Huffington Post)」のような報道サイトの登場としています。
- 新会社ハフィントン・ポスト メディアグループ(Nobuyuki Kokai)
読者は多様な情報源を使用するようになるが、「慎重で詳細な分析がふさわしい場がある。また日常的な最新速報の氾濫からは距離を置き、長文記事で世界を描き出すのに適した場もある──しかしこれらの手段や場を数多く、そして有効に活用できる報道機関は少なく、すべてのテーマについて網羅できているところなど皆無である」と述べています。