世界中で何十億の人々が利用しているGPS(グローバル・ポジショニング・システム)は、米国が運用している衛星測位システムです。12月上旬からロシア国内の複数都市で、GPS信号の妨害が連続していることが明らかになりました。ウクライナが12月初旬からロシア国内の軍事基地をドローンで攻撃していることから、GPSナビゲーションのドローン攻撃を無力化しようとする可能性が指摘されています。
- ウクライナによるドローン攻撃の無力化が狙い? ロシアの複数都市でGPS信号が妨害されている(12/20 Wied.jp)
全世界測位システム(GNSS)は、米国の GPS、欧州のガリレオ(Galileo)、ロシアのグロナス(GLONASS)、中国の北斗衛星導航系統(BeiDou)をはじめとする衛星を用いた測位システムの総称ですが、これらを妨害する手段はいくつかあり、最も一般的な攻撃はジャミングとスプーフィング攻撃です。
GPSの妨害は、監視システム「GPSJam」が最初に観測しました。GPSJamは衛星測位システムの障害を追っているサイトです。12月10日までは、ロシアで観測したGPSの妨害は限定的なもので、大部分はクレムリンが長年にわたってGPSの信号を改ざんしてきたモスクワ周辺で発生していました。(プーチン大統領の追跡妨害か?)
2022年2月にロシアがウクライナへと本格的に侵攻した際、モスクワ周辺以外ではGPS信号の妨害を検出していませんが、12月11日以降になると、ロシア国内の複数の地域でGPS信号の妨害が発生しています。特にロシアの西部に位置するサラトフ(エンゲリス空軍基地)、ヴォルゴグラード、ペンザの各都市でGPS信号の妨害の件数が増えていることが記録されています。
GPSJamは、世界中を飛行する飛行機が送信する放送型自動従属監視(ADS-B)の信号を調べることで機能していると、システムを開発した技術者でオープンソース愛好家のジョン・ワイズマン(John Wiseman)氏は説明しています。ロシアがウクライナに侵攻した22年2月以降、GNSS信号の妨害は複数回にわたって確認されています。3月に欧州航空安全機関がウクライナ周辺や近隣地域で衛星測位システムへのジャミングやスプーフィングが発生していることに対して警告を発しています。
ロシアの電子戦能力の分析によると、GPSを妨害できる複数種類の軍用機器を保有しています。信号を遮断したい地域まで移動させて、信号を妨害できる多数のアンテナを搭載したトラックや車両などがあります。