2月23日、ロシアがウクライナへの軍事侵攻を開始して1年となるのに合わせて、国連総会では、ロシア軍の即時撤退とウクライナでの永続的な平和などを求める決議案の採決が行われ、欧米や日本など141か国が賛成して採択されました。中国やインド、南アフリカなどの32カ国が棄権し、ロシアや北朝鮮、ベラルーシ、シリア、マリ、ニカラグア、エリトリアの7カ国が反対しています。軍事侵攻以来、国連総会での決議採択は6回目です。
- 国連総会、ロシアの戦争犯罪訴追を決議 141カ国賛成(2/24 日本経済新聞)
今回の緊急特別会合の決議には、初めてロシアの戦争犯罪に対する「調査と訴追」の必要性が明記されています。戦争犯罪の追及については国際刑事裁判所(ICC)が侵攻直後から捜査を進めていますが、ICCにはロシア、ウクライナ両国は加盟していません。
この決議はウクライナのゼレンスキー大統領が求めていた「特別法廷の設置」など、具体的な方法には言及していません。過去には旧ユーゴスラビアの戦争犯罪や、ルワンダの虐殺などで特別法廷が設置されましたが、いずれも国連安全保障理事会の決議に基づいていました。拒否権を持つ常任理事国であるロシアに対してはこの形式で裁くのは難しいのが現状です。
国連総会に出席した林芳正外相は緊急特別会合で演説し、「想像してみて下さい」と世界各国に呼びかけて、「ある安保理常任理事国」が、祖国を侵略した上で「平和を呼びかけてきたとしたら、どうでしょうか?」と問いかけます。ウクライナ領の一部を武力で制圧した上で、和平交渉を呼びかけているロシアを念頭にしたものです。私はこれを「不当な平和」と呼びたい。このような行為が許されるのであれば、それは侵略者の勝利となってしまうでしょう。(全文は下記から)
国連憲章に基づく平和の実現がなければ「世界は野蛮な力と威圧が支配するジャングルと化してしまう」と述べ、決議案に賛成するよう加盟国に呼びかけました。また、「ロシアは拒否権の乱用のみでは飽き足らず、核兵器保有国としての立場も悪用している」 さらに、「核兵器の使用はもとより、ロシアによる核の威嚇は決して許されるものではない」と批判しました。
2月24日、中国外務省はウクライナ危機の政治的解決に関する中国の立場を示す文書を公表し、危機が制御不能になるのを回避することを望むと表明しました。
- ウクライナ危機の政治的解決に関する中国の立場
China’s Position on the Political Settlement of the Ukraine Crisis(2/24 mfa.gov.cn) - ウクライナ侵攻中国の和平案/仲裁案/文書 ?(Google検索)
和平案/仲裁案というほどの具体性はない文書で、林芳正外相のいう「不当な平和」を正当化しようとしていないかを精査し、中国からロシアへの武器供与が噂されている中、これからの中国の具体的な行動を注視する必要があります。