フランスの無政府主義者ルイーズ・ミシェル(Louise Michel)と名付けられた難民救助船は、8月18日にスペインのブリアナ港から秘密裏に出発しました。英国の覆面アーティストのバンクシーが移民・難民救助にあたるこの民間救助船の購入資金を提供しました。船体には、バンクシー作品(Girl with Balloon)でおなじみの女の子が救命胴衣を身につけ、ピンク色のハート形の浮輪に手を伸ばす様子が描かれています。
- Banksy funds refugee rescue boat operating in Mediterranean(8/27 Guardian)
- named Louise Michel(Website) ルイーズ・ミシェル号
Louise Michel(ship)は、元フランス海軍のボートを捜索救助を行うためにカスタマイズした船です。長さ30メートル、他のNGOの救助船よりも小型ですが、28ノット(約52Km/h)を超える速度が出せます。バンクシーのアートワークの売上げで買い取られ、移民・難民救助船に改造されました。ヨーロッパ各地から集まったレスキューの専門家が乗組員になっています。
2019年の9月、人権活動家でNGOが所有する救助船(Sea-Watch)の船長ピア・クレンプ(Pia Klemp)さんのもとに、バンクシーを名乗る人物からメールが来ます。
「君の活動を新聞で読んだ。君はすごいな」「私は最近、難民危機をテーマにした作品を描いた。お金を手元に置いておけないから、新たな船の購入か何かに使ってくれないか」という内容でした。クレンプさんは最初は冗談だと思ったそうです。
- バンクシー絵画に3億円 欧州難民危機を風刺―英競売商(7/29 時事ドットコム)
その後、バンクシーさんがクレンプさんの活動に賛同したことが解り、ミシェル号が最初の救助を成功させるまでメディアには公表しないことで、ピア・クレンプさんとBanksy(Instagram)が合意していたとのことです。
情勢不安定なリビアは、人身売買の中心地になっています。ルイーズ・ミシェル号の乗組員は、移民・難民ボートの沈没やリビア沿岸警備隊などに見つかり、劣悪な拘留キャンプに引き戻される前に、ミシェル号で救助できればと述べています。
- リビア沖で移民らのボート沈没、子ども含む45人死亡=国連(8/20 BBC News Japan)
- 地中海での難民船事故の一覧(Wikipedia)
Captain Pia Klemp(TEDxBerlin SUPERPOWERS)
- 海で難民助けると違法? 港閉ざしたイタリアに各国批判(7/1,2019 朝日新聞)