恐竜の足跡は、ティラノサウルスやステゴサウルスなどの日々の行動を骨の化石よりも詳しく教えてくれる、と古生物学者マーティン・ロックリー(Martin Lockley)さんは語ります。米コロラドにある “恐竜の愛の小道” から韓国の岩礁海岸まで、ロックリーさんは、かつて地球上を歩いた最も印象的な生き物の足跡から、私たちが何を学べるのかを解説します。
- TED Speaker: Martin Lockley(Paleontologist)
- The University of Colorado Fossil Tracks Collection(Website)
私は古生物学者です、7歳児の夢の仕事ですよね(笑)
50年前はほとんどの古生物学者が、足跡の化石ないしは生痕化石は稀にしか見つからず重要ではないと考えていました。足跡化石の論文は、査読に回しさえせずに掲載拒否する科学誌もありました。当時は「骨」が全てだったのです。世界中の博物館に展示されている恐竜骨格の数を見れば一目瞭然です。しかし、骨からは思ったほどには情報を得ることができません。
かの有名なシャーロック・ホームズがこう言ったのも不思議ではありません。「捜査技術の中で最重要ながら評価されていないのが足跡追跡の技術だ」さすが分かっていますね。犯行現場の痕跡から犯人の行動を再構成する上で、足跡がいかに重要なものかを完全に理解しています。
実は私の父は鳥類学者で、現代の鳥類の繁殖期における熱狂的で情熱的な行為に関して研究していました。この恐竜たちの求愛行動の証拠を見たらならば大変驚いたことでしょう。小鳥たちが砂を引っ掻いている姿と、1トンある巨大な肉食恐竜が地面を大きくえぐる様の違いを。ホルモンに突き動かされ熱狂して上げる雄叫びを想像してみてください。
大変興味深い話で、よくある恐竜発見論文よりは注目されると思っていましたが、案の定、ネイチャー誌サイトのトップを飾り、深夜トークショーでネタにまでされました(笑) このような化石現場は本物のジュラシックパークであり、保護しなければなりません。そこは恐竜や絶滅動物が、懸命に生き、愛し、戦った場所なのです。ストーンヘンジやポンペイや、グランドキャニオンを保護するのと同様に足跡化石のある場所も将来のために守る必要があります。
これは「地質遺産」、大切な「過去の記憶」であり保護することは極めて重要です。次の7世代の7歳児たちの夢のためにも。ありがとうございます。(拍手)
2020年12月8日、韓国政府は恐竜追跡への貢献を称え、米デンバー大学地質学名誉教授マーティン・ロックリー氏に大統領勲章を授与しました。
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