伝説によると,紀元前27世紀,中国の黄帝(こうてい)が史官の蒼頡(そうけつ)に文字を作ることを命じました。川岸に座った蒼頡は周囲に見えるものの概念に気づき,最初の漢字を作りました。その後、漢字は三千年間でどのような変化を経てきたのでしょうか。ジーナ・マリー・エリア(Gina Marie Elia)さんが世界最古の文字の一つである漢字の歴史を探究します。
蒼頡は、周囲に見えるものの概念に気づき最初の漢字を作りました。その夜、天から穀物が降り、鬼は声を上げて泣きました。文字によって自分の行いを咎められると恐れたためでした。その話が真実かどうか定かではありませんが・・。
漢字が刻まれた最古の遺物は、紀元前1250年から1050年頃の殷王朝のもので、世界最古の文字の1つとされています。牛の骨や亀の甲羅に刻まれた文字は、殷王が祖先に宛てたもので、農業から歯痛の原因まであらゆることが書かれています。伝説が示唆するように、これらの古代文字は主に絵文字や象形文字で、表す対象によく似た形でした。
部首は214個あり、それぞれが意味を持ちます。単独で成立するものと、そうでないものがあります。例えば、部首の「日」は単独で太陽を意味します。また、太陽に関連する意味を持つ文字にも使われます。夜明けを意味する「暁」がその例です。
音要素は部首よりも数が多く、数千にも及ぶとされています。類似した音を持つ文字には同じ音要素が含まれることが多く、部首が意味を明らかにする手がかりになります。「峰」と「蜂」を例にしてみましょう。部首の「山」は1つ目の文字の意味「山頂」の ヒントになります。2つ目の文字の部首「虫」と音要素を合わせると「ハチ」を意味します。
漢字体系は独特に見えるかもしれませんが、その発展は、近隣諸国の口語や書記体系に大きな影響を与えました。例えば、日本の国語辞典の見出しの6割は漢字であり、中国語に由来するものか、中国語の構成要素から成るものです。漢字には三千年の歴史があり、その存在はこれからも続いていくでしょう。
肖像画では、蒼頡は目が四つある人物として描かれており、これは蒼頡の優れた観察力を表現したものといわれます。中国でほかに帝舜と項羽も四つの目をもつ人物として描かれます。現在では、蒼頡の伝説は漢字を改良した実在の人物をモデルとしている可能性はあるにせよ、漢字は単一の人物によって創造されたものではないと考えられています。