多くの動物は睡眠が必要です。しかし、動物が直面する脅威や要求は、眠っている間にも振りかかってきます。そのため、鳥類や哺乳類の一部、そして人間さえも、ある程度の非対称的な(脳の一部は眠っているにもかかわらず他の部分は活動している)睡眠を行います。さて、どんなふうに? 睡眠中という最もスキの多い状況でも、動物が警戒し続けられる方法を、玉置 應子(Masako Tamaki)博士が探ります。
- Can you be awake and asleep at the same time? – Masako Tamaki(TEDEd)
- 玉置 應子, Ph.D.(認知睡眠学理研白眉研究チーム 理研白眉チームリーダー)
脊椎動物の脳は二つの半球で構成されています。右半球と左半球です。通常、睡眠中の脳活動はどちらも似たような状態ですが、非対称的な睡眠の間は、片半球の脳は深い眠りに、もう一方は浅い眠りの状態になります。この差が顕著になる「半球睡眠」という状態では、片半球は完全に起きているように見えますが、もう一方は深い眠りについています。
例えば、バンドウイルカ。彼らは意識的に呼吸しています。数分毎に空気を吸いに水面に上がらなければ溺れてしまうのです。赤ちゃんが生まれたら、赤ちゃんの安全を守るため数週間泳ぎ続けなければなりません。そこでバンドウイルカは、脳半球ごとに睡眠をとるのです。こうすることで睡眠をとりながら、泳いだり、呼吸し続けることができます。
人間においても非対称的睡眠に類するものと発見しました。研究者たちは、実験初日の夜、被験者たちが右半球の脳で深い眠りを、そして左半球の脳で、浅い眠りをしていると観察しました。不規則的な音に対しては、浅い眠りの左半球の脳がより顕著な活動を示しました。また、被験者たちは2日目以降、両方の脳が深い眠りについている夜よりも、初日の方がより早く不規則な音に目を覚ましたり、行動的に反応したりしました。これは、他の動物と同じく、人間も警戒のために、非対称的睡眠をするということを示唆しています。慣れない環境下では特にそうです。
私たちは1日の終わりに必ず睡眠をとります。もちろん中にはあまり眠らなくても大丈夫なシュートスリーパーの人もいますが、まったく寝ない状態では生きることができません。では、人はどうして寝なければいけないのでしょうか。寝ている間に脳ではどんなことが起こっているのでしょうか。(理研CBSコラボ/ScienceTalks TV)
玉置さんは、小さい頃から勉強好きな人を想像してしまうかもしれませんが、高校生の頃は「高校卒業したら適当に就職して最低限働いて、残りの時間は遊んで暮らそう」と思っていたそうです。また「大学に進学する気もなかった。コギャル(Kogal)ってご存知ですか? あんな感じでした(笑) 勉強したくなかったので、自由な校風を掲げた高校に進学しました。でもそこで、とても良い先生に出会いました」と語っています(^^)
番組の前編は「睡眠の謎に迫る研究!人はどうして眠るのか」、そして後編が「きっかけは金縛り?睡眠研究に片思いを抱く研究者」と題したYouTubeがあります。後編には、あまり目にしない睡眠研究の被験者を募集している「睡眠ラボのツアー」があります。
- CBS MAGAZINE _X_BRAIN Vol.2(Oct. 2021 / cbs.riken.jp)
- 認知睡眠学理研白眉研究チーム 玉置 應子(前編・後編/YouTube再生リスト)