トランプ米大統領が5月21日、ホワイトハウスで南アフリカのシリル・ラマポーザ大統領と会談した際に、南アの白人農民が虐殺されたと主張した画像は、ロイター通信がコンゴ民主共和国で撮影した全く関係がない動画から切り札した画像だと分かりました。ロイターのファクトチェックチームが検証したところ、コンゴの都市ゴマで隣国ルワンダが支援する反政府武装勢力M23による襲撃で殺害された人々の遺体を運ぶ人道支援団体の画像(下記の動画)だと確かめられました。
- トランプ氏主張の「白人迫害」映像、コンゴで撮影の無関係動画と判明(5/23 ロイター)

ホワイトハウスで行われたラマポーザ大統領との首脳会談で、南アフリカでは白人が殺害されるなど迫害されていると一方的に主張し批判しました。その際、南アでの迫害について伝える記事が多くあるとしてラマポーザ大統領や報道陣らに記事が印刷された紙の束を見せました。
トランプ氏が見せたのは、保守系オンラインマガジンのアメリカン・シンカー(American Thinker)が投稿した画像です。これは今年2月3日にロイターが配信(下記動画)したものです。
アメリカン・シンカーのマネジングエディターで投稿記事を作成したアンドレア・ウィッドバーグ(Andrea Widburg)氏はロイターの問い合わせに対して、トランプ氏が「画像を誤認した」と認めました。
実際に映像を撮影したロイターの記者は「全世界が見守る中で、トランプ氏は私がコンゴ民主共和国で撮影した映像を使い、南アで黒人が白人を殺害しているとラマポーザ氏を説得しようとした」と語り、ショックを受けたとしています。今回のロイター通信の報道についてホワイトハウスはこれまでのところコメントしていません。
テレビカメラと報道記者が居並ぶ大統領執務室で会談相手のラマポーザ大統領に不意打ちを食らわせています。同執務室は本来、外国要人を歓迎する名誉ある場所ですが、リアリティ番組スターの経歴があるトランプ氏には、外国元首をさらし者にする政治ショーの場ともなっているようです。
ウクライナのゼレンスキー大統領が2月に面罵されたのも大統領執務室でした。ラマポーザ氏の場合もホワイトハウスが最大限の演出効果を狙って仕組んだ異例の政治ショーだったのは明らかです。トランプ氏はラマポーザ氏に対し、南アフリカで白人大量殺害や土地収用など「ジェノサイド(大量虐殺)」が起きていると事実無根の主張を並べ立てています。
- President Trump Participates in a Bilateral Meeting with the President of South Africa(5/22 The White House)
- アングル:米大統領執務室でのドラマ再び、要人は招待受け入れに二の足も(5/22 ロイター)