耳がどういう仕組みになっているのか不思議に思ったことはありませんか? 生物物理学者のジム・ハズペス(Jim Hudspeth)博士のトークは、有毛細胞(Hair cell)が見事に単純な仕組みで驚くほどの処理能力をもつことを、明快に魅力的に紹介します。
有毛細胞は聴覚を実現するミクロの原動機であり、それゆえに極めて静かな環境下では、耳から一人ひとりの固有の音が生じるのです。
講演で真の主人公となるのは、耳の感覚受容器で「有毛細胞」と呼ばれます。「不運」にもそう名付けられました。普通の毛髪とはまったく関係ないからです(^^) 20本から数100本の微細な棒状の円柱が集結して細胞の上の端に立っています。
私はこれらの細胞たちを愛していると言っておかなければなりません。付き合って45年になります。(笑) その美しさも理由の一部です。ここには美的な要素があります。結晶のような秩序も見られます。
感覚毛はアンテナになっていて、音の振動を電気的応答に変換、その信号を脳が解釈します。この動作方式はとても速く、他の感覚器官に比べ優に1,000倍もの早さです。私たちは音を毎秒2万回もの高周波数域まで聞くことができます。そして、もっと速い耳を持った動物もいます。例えばコウモリやクジラの耳は、毎秒15万回という彼らの超音波パルスを検知します。
ハズペスさんがこれから取り組みたいこととして、1つ目は有毛細胞の増幅器の動きを決める分子モーターはどんなものなのか? 2つ目に有毛細胞による増幅を音の環境に応じて調整する方法は? そして、3つ目は聴力低下に対してできること・・・有毛細胞が再生できるように研究を進めます。(拍手)
- TED Speaker: Jim Hudspeth(Biophysicist, neuroscientist)
- Japanese translation by Hiromi Nakai. Reviewed by Natsuhiko Mizutani.(日本語字幕を読む)
- A. James Hudspeth, M.D., Ph.D.(The Rockefeller University)
音が脳にどのように伝わるかを分かりやすく説明しているアニメーションです(^^)