MethaneSAT(メタンSAT)を紹介します。この衛星は1日に15回地球を周回して、非常に強力な温室効果ガスであるメタンの排出量を追跡しています。環境保護活動家のミリー・チュー・ベアード(Millie Chu Baird)氏は、メタンがもたらす気候変動について詳しく説明します。また、メタン発生源を理解し、削減策を講じることが最も重要なことである理由を説明します。すでに初期の衛星データから超汚染源が判明してきています。
- TED Speaker/TED Attendee: Millie Chu Baird(Environmental advocate)
- Novel observations reveal methane emissions from oil and gas operations that other satellites don’t see(11/16 Environmental Defense Fund: EDF)
メタンは短期的に非常に強力な温室効果ガスです。メタンは熱を閉じ込める力がCO2の80倍以上あるため短期的には、メタンはCO2と同じくらいの温暖化を引き起こします。メタンの発生源を特定できれば制御しやすくなります。
私たちの目標は、MethaneSAT(メタンSAT)のデータとメタン発生現場での実践により、石油・ガス施設からのメタン排出を、今後6年間で75%削減することです。現在、世界の石油・ガス生産の40%を占める50社が、2030年までにメタン排出量を90パーセント削減することを約束しています。(拍手)
メタン衛星と地球上の人々の力で、できるだけ早く、できることはすべてやりましょう。私たちの生きている間に地球温暖化の進行速度を遅らせるためです。ありがとう。(拍手)
- 衛星写真が示す、超汚染性メタンを驚異的に排出している場所(11/28 CNN)
MethaneSATの初期調査結果によると、石油・ガス業界は、米環境保護局(EPA)の推定値の平均3~5倍のメタンを排出しています。これは業界が2023年に合意した水準をはるかに上回ります。世界で特に生産量の多い石油・ガス盆地の一つであるパーミアン盆地(下記データ)では、業界が合意した制限値の9~14.5倍、つまり毎時290トン近くのメタンが漏れ出ています。
長い間、メタンによる汚染は過小評価され、十分に理解されておらず、成分の最大90%がメタンである天然ガスは、発電用の化石燃料として台頭しています。しかし科学者らは、メタンが大気中に放出されてから最初の20年間でCO2の約80倍の熱を閉じ込めることを把握しています。衛星の初期データは驚くべきものです。米国の石油とガスの6~7%を生産するにすぎない50万あまりの油井が、同産業のメタン汚染の約50%を生み出しています。
衛星はトルクメニスタンとベネズエラのデータも収集、いずれも主要石油生産国です。トルクメニスタンの南カスピ海盆地(下記データ)で特に深刻です。同盆地は地球上で有数のメタン発生地域とされます。衛星データによると、この地域はパーミアン盆地の1.5倍のメタンを排出しており、その量は毎時440トンを上回ります。
MethaneSATは、世界最大の石油埋蔵量を誇る南米ベネズエラのメタン排出を示す最初の画像(下記)も生成しました。しかし、ベネズエラは熱帯地方に近く、雲に覆われやすいため、メタン排出を詳細に捉えることは困難であることも分かりました。
グローバル・カーボン・プロジェクト(Global Carbon Project: GCP)の議長でスタンフォード大学の気候学教授であるロブ・ジャクソン(Rob Jackson)氏は石油・ガス産業はメタン削減を簡単に実現できると述べています。一方で、同氏は気候危機には実際の解決策がさらに必要であり、それは化石燃料の使用を完全にやめることだとも指摘しています。