クモの網に獲物がうっかり引っかかるのを待つのではなく、驚異的な加速度(F1の100倍)の罠でアリを捕えるバリスタグモ(Ballista Spider)がオーストラリアで発見されました。バリスタ(ラテン語: ballista)とは、古代から中世にかけて用いられた据え置き式の大型クロスボウ(弩)ですが、このクモの愛称となっています(^^)
- 新たに発見されたクモ、「死の罠」で獲物捕らえる様子を初めて撮影 豪州(6/24 CNN)
- Ballistic high-powered spider webs overcome dangerous prey defenses(6/22 Cell Press)

円錐型の糸(罠)を餌と思ったツムギアリがこれにかみつくと、罠から伸びる糸が上方へ縮んでアリを罠ごとクモ本体の主網へと引き上げる仕組みです。クモが糸の伸縮を利用してこのような離れ業をやってのける様子は、これまで観察されたことがなかったそうです。
研究チームは毎秒5,000フレームの速度で罠が作動する様子の撮影に成功しました。作動した罠の加速度は秒速4,921Kmを超えています。これはF1(自動車)の加速度の約100倍に相当すると、豪マッコーリー大学教授で論文筆頭著者のナレンドラ(Ajay Narendra)氏は述べています。
バリスタグモは、獲物自身によって作動する弾道式の罠を仕掛けることで、攻撃性の高いアリの集団から個々のアリを隔離するという難題を克服しています。この強力な罠は、極端な生態学的特殊化がいかにして卓越した生体力学的性能の進化を促すかを示しています。

(A) バリスタグモ ( Propostira sp.) は日中、葉の下で休んでいます。(B) バリスタグモは夜、巣の中で獲物を待ちます。(C) 誘引物(罠)として機能する糸の円錐を拡大した図です。矢印は円錐型の付着部です。(D) 重ね合わせた高速ビデオフレームは、引き上げられたアリの軌跡を示しています。画像は、引き上げられるアリを最もよく表すように選択され、時間間隔は一定でありません。矢印はアリとクモの移動方向を示しています。(下記動画参照)
(E) 左から右へ: キャプチャシーケンス: 0 秒=クモが円錐を巻き始めます。79 秒=円錐が完全に巻き付けられ、クモは上方に後退して待ち始めます。132.70 秒=ツムギアリが円錐に引き寄せられます。132.96秒=アリが突進して円錐を噛みます。132.99秒=円錐は基質から分離され、アリは引き上げられる前に、崩れた円錐が大顎に絡まっています。
(F)クモの獲物捕獲システムの平均運動性能の比較です。(G) 絹糸の弾性エネルギーの蓄積を利用する罠を持つクモの系統図です。
愛称のスリングショット・スパイダー(Theridiosoma)は、パチンコ(スリングショット)のように巣を弾いて獲物を捕らえる、南米のアマゾンなどに生息する非常に珍しいクモです。射出スピードの加速度は、毎秒1,300mに達しており、チーターの100倍以上に匹敵します。