スイング・ステート(Swing state)は、米国大統領選挙の勝者総取り方式において、共和党・民主党の支持率が拮抗し選挙の度に勝利政党が変動(振り子のように揺れる)する州を指す言葉です。スイングステートのアリゾナ州最高裁判所は4月9日、大統領選の争点の1つである人工妊娠中絶に関して、妊婦の命を救う場合を除いて、ほぼ全面禁止の判決を下し注目されています。JETRO(日本貿易振興機構)が、米国大統領選やスイングステートを解りやすく説明しています。
- 特集:2024年米国大統領選挙に向けての動き(JETRO)
<11/4:追記>最新情報にアップデートされてます。 - 米アリゾナ州で人工妊娠中絶がほぼ全面禁止、トランプ氏は州別判断の立場維持(4/12 JETRO)
- (出所)270toWin、Real Clear Politics(RCP=世論調査平均は2月28日時点)(JETRO)
- 米有権者の約3割が人工妊娠中絶に対する立場で投票先を判断、世論調査(6/23, 2023 JETRO)
米国主要メディアによると、米国では、妊婦の命を救う場合やレイプなどの理由を除き、人工妊娠中絶を全面禁止している州は現在14州あります。全て共和党が優勢な州で、ここにアリゾナ州が加われば、初めてスイングステート(激戦州)が加わることになります。そのほか、共和党が優勢なサウスカロライナ州と激戦州のジョージア州では、妊娠6週目より後の人工妊娠中絶をほぼ全面禁止しています。フロリダ州では、これまで妊娠15週目までの人工妊娠中絶を合法としていましたが、5月1日から6週目までに変更されます。
トランプ氏は移民や経済問題で、民主党のバイデン大統領に対して優位に立っていますが、政治に大きな影響力を及ぼす人工妊娠中絶問題がそれを脅かす恐れがあります。人工妊娠中絶は大統領選挙の争点の1つになっており、今回のアリゾナ州の判決と判断が注目されています。トランプ氏は、アリゾナ州での判決の前日の4月8日に「人工妊娠中絶に関しては、妊娠何週目という判断も含め、各州が判断すべきだ」と発言、同時に「ロー対ウェイド判決」を破棄した6人の判事を称賛し、「50年に及ぶ論争を経て、ついに(人工妊娠中絶に関する課題は)連邦の手を離れ、各州の市民の判断と投票によって決められることになったのは素晴らしい」とも述べています。
アリゾナ州最高裁の判決翌日の4月10日、トランプ氏は「判決は行き過ぎだ」としつつ、11月の大統領選挙で再選されたとしても、全国的な禁止措置には署名しないと発言しています。一方でバイデン大統領陣営は、トランプ氏のこれまでの行動から、この発言を「虚言だ」と批判しています。
- 米大統領選に向けた中絶論争、注目はアリゾナ州(4/11 WSJ)
- 米大統領選で中絶問題が争点に、バイデン氏はトランプ氏の弱み突く(4/12 Bloomberg)
全米で人工妊娠中絶を含むヘルスケアサービスを提供する非営利団体で、今回アリゾナ州の裁判で原告側となったプランド・ペアレントフッド(PPFA、全米家族計画連盟)は、女性は通常、妊娠6週目には妊娠に気づいていないことが多いことなどを理由に、6週目より後の人工妊娠中絶が禁止される場合、気づくのが早い人でも中絶できる期間は気づいてから実質2週間しかないとしています。そのためか、「6週目より後の禁止」を「ほぼ全面禁止」と同様に扱うメディアも少なくありません。