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検証可能なアルゴリズムを最速スパコンの13,000倍で計算(Google: Willow)

10月22日、Googleは量子コンピュータWillow processor)が検証可能なアルゴリズムを、最速スパコンの13,000倍高速の速度で計算することに成功したと発表しました。検証可能な「量子優位性」を示す史上初の事例としています。Googleは、今後5年以内に量子技術の実用化につながる重要な一歩と位置づけています。なお、研究成果は Natureに掲載されています。

Our Quantum Echoes algorithm is a big step toward real-world applications for quantum computing / Google

Googleは2014年12月に105個の量子ビットを搭載する新量子チップ Willow(ウィロー)を発表しました。Willowは実用的な大規模量子コンピュータへの道を開く「エラー訂正」と「パフォーマンス」を実証しています。Willowでは、量子ビットの数を増やすほどエラー率が指数関数的に減少します。また現在の最速スパコンで10の25乗年かかる計算を5分未満で完了します。

新量子チップ「Willow」は、最速スパコンで10の25乗年かかる計算を5分で完了



そして2025年10月22日にGoogleは、「Willowを用いて史上初の検証可能な量子優位性を実現した」という研究成果を発表しました。この研究では従来型コンピュータが苦手とする量子カオス系のシミュレーションに取り組み、量子エコー(Quantum Echoes)と呼ばれる新開発のアルゴリズムを用いることで世界最速のスパコンと比べて13,000倍高速な計算に成功したことが示されています。

This diagram shows the four-step process for creating a quantum echo on our 105-qubit array: run operations forward, perturb one qubit, run operations backward, and measure the result. The signal’s overlap reveals how a disturbance spreads across the Willow chip.

この研究で開発されたアルゴリズムを用いることで、他の量子コンピュータでも同一の答えを得ることが可能です。これにより、「異なるマシンでは異なる計算結果が出力される」という既存の量子コンピュータの弱点を克服し、量子コンピューターの実用化に向けて一歩前進することとなりました。

実世界への応用に向けて、量子コンピュータは、原子や粒子の相互作用、分子の構造(または形状)といった量子力学的現象のモデル化に大きく貢献します。分子の形状とダイナミクスのモデル化は化学、生物学、材料科学の基礎であり、この技術の進歩はバイオテクノロジーから太陽エネルギー、核融合に至るまで、幅広い分野の進歩を支えています。

Quantum Echoes アルゴリズムによる、史上初の検証可能な量子優位性の実証は、量子コンピューティングの最初の実世界への大きな一歩となります。本格的な誤り訂正量子コンピュータの実現に向けてスケールアップしていく中で、このような実用的な実世界アプリケーションがさらに多く発明されることを期待しています。現在、私たちは量子ハードウェアロードマップのマイルストーン3 、つまり長寿命論理量子ビットの達成に注力しています。

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