10月2日、アフリカ・コンゴ民主共和国でのエボラ出血熱による死者が4,000人を超えました。感染確認例は8,000人を超え、同国史上最悪の規模で感染が広がっています。今回流行しているブンディブギョ株(Bundibugyo ebolavirus)に対する複数のワクチン開発や治療法の研究が現在急ピッチで進められています。しかし、感染は急速に拡大、資金や人員体制など、封じ込めに危機感を募らせています。
- 世界の関心が薄れたエボラ出血熱、対策組織が抱くかつてない危機感(10/5 Wired)
- 2026 Ebola epidemic(en:Wikipedia)
- Bundibugyo virus disease outbreak(WHO)

5月17日に世界保健機関(WHO)は、コンゴ民主共和国などでエボラ出血熱の感染が広がっているとして、「国際的な公衆衛生上の緊急事態」を宣言しています。5月中旬公式に確認された今回の流行は、北東部のイトゥリ州で始まり、北部と東部の7州に拡大。武力衝突や暴力が続く不安定な地域で感染が広がっており、深刻な資源不足も重なり、医療対応に影響が出ています。
2017年から感染症流行対策イノベーション連合(CEPI)に在籍し、現在は危機対応・準備担当エグゼクティブディレクター兼米国責任者を務めているニコール・ルーリー(Nicole Lurie)氏は、「世界全体に影響を及ぼした新型コロナウイルス感染症を除けば、これほど恐怖を感じた事態はありません」と述べています。

ルーリー氏は、「これまで見てきたエボラ出血熱の流行のなかで、最も急速に拡大しています。このまま広がれば、おそらく史上最悪の流行になるでしょう」と述べ、「非常に恐ろしい事態です」と語ります。
ウガンダでは保健当局が接触者の追跡や隔離、治療によって流行を終息させることができました。一方、コンゴ民主共和国では情勢が不安定で、感染者数は増え続けています。ルーリー氏によると、紛争が続くなかで数百万人が住む場所を追われており、接触者の追跡は「困難を極めている」と言います。
5月にブンディブギョ株による最初の感染例が報告されてまもなく、CEPIは1億ドル(約150億円)の内部資金をワクチン開発に振り向けました。この資金により、インドの医薬品メーカーであるSerum Institute of Indiaの研究者たちは、オックスフォード大学(OVG)が開発したワクチン「ChAdOx1 BDBV」の製造を記録的な速さで進めました。このワクチンと、同じくCEPIが支援するモデルナのワクチン候補はすでに安全性を検証する試験に入っており、有効性を検証する臨床試験も今月開始される見込みです。

CEPIはワクチンが流行終息の鍵になるとみていますが、臨床試験には接触者の追跡が必要なことから、現地で実施するには依然として多くの課題があるとみられます。「心配なのは、ワクチンに対する不信感や疑念です」と、ワクチン学・免疫学教授のテレサ・ランベ(Teresa Lambe)は語ります。ランベ教授は、オックスフォード大学が進めるワクチンの安全性試験で主任科学研究者を務めています。
ドナルド・トランプ大統領は2期目が始まった直後に米国をWHOから脱退させ、米国国際開発庁(USAID)を解体しました。それ以降、国際的な緊急対応にあたる組織では人手不足が続いています。さらに、トランプ政権による対外援助の削減によって、現場の対応要員はマスクや手指消毒剤、検査機器といった基本的な医療物資の不足にも直面しています。

2014年西アフリカでエボラ出血熱が流行した当時、ルーリー氏はオバマ政権下の米保健福祉省で、危機対応・準備担当次官補を務めていました。米国内で報告された11件の感染例に対応するだけでも、「信じられないほどのパニックが起き、対応には途方もない費用がかかりました」と振り返ります。「あれをもう一度経験したいと思う人はいないでしょう」と述べています。
*2014年の西アフリカエボラ出血熱流行では、2015年10月18日までにおける世界保健機関(WHO)の発表によると、感染疑い例も含め28,512名が感染し、11,313名が死亡(死亡率40%)しました。

