5月8日、Google DeepMindと AI創薬企業 Isomorphic Labsが開発した、タンパク質の立体構造を予測するAI(AlphaFold 1,2)の最新版「AlphaFold 3」を発表しました。タンパク質に加え、DNA、RNA、リガンドなどの構造と、それらがどのように相互作用するかを正確に予測することができます。生物学の世界と創薬に対する私たちの理解を変える可能性があります。がんをはじめとする病気の解明や、新薬の開発を加速させると期待されます。
- AlphaFold 3 predicts the structure and interactions of all of life’s molecules(5/8 Google DeepMind)
- Rational drug design with AlphaFold 3(5/8 Isomorphic Labs)
- 創薬を加速させる新しいAI、DeepMindが発表した「AlphaFold 3」が秘めた可能性(5/9 Wired.jp)
Natureに掲載された論文では、すべての生命分子の構造と相互作用を前例のない精度で予測できる革新的なモデルであるとしています。タンパク質と他の分子タイプの相互作用については、予測精度が従来モデルより50%向上したほか、いくつかの重要なカテゴリーについては2倍になったとしています。
「AlphaFold 3」は2020年にリリースされたAlphaFold 2の基礎をベースに構築されています。前のモデルである AlphaFold 2はタンパク質の構造予測において根本的な進歩を遂げることに成功し、マラリアのワクチンやがんの治療、酵素の設計などの分野で数々の発見を手助けしてきました。
最新AIモデルである「AlphaFold 3」は、タンパク質だけでなく広範囲の生命分子を扱うことが可能になりました。生物再生可能材料や回復力のある作物の研究から、医薬品設計やゲノミクス研究まで幅広い分野での革新を後押しすると期待されています。
AlphaFold 3は、新たに公開された研究ツールである「AlphaFold Server」を通じてアクセス可能で、非営利目的での利用であれば機能のほとんどを無料で使用可能とのことです。AlphaFold 3の開発に関わった Isomorphic Labsはすでに製薬会社と協力し、AlphaFold 3を使用して新たな治療法を研究中とのことです。
下記動画では、Google DeepMind CEO兼共同創設者のデミス・ハサビス(Demis Hassabis)氏が、病気の予防や治療を含む生物学の問題に取り組むことを目的とした同社の AlphaFold AI システムの最新版「AlphaFold 3」について、ブルームバーグのトム・マッケンジー(TomMackenzie)氏と対談しています。
また、ハサビス氏はAIの誇大宣伝サイクルやAI開発の医薬品タイムライン、そして、アルファベットの子会社 Isomorphic Labsが1,000億ドル規模の企業になれると考える理由についても語っています。
医師で科学者のエリック・トポル(Eric Topol)氏は、スクリプス研究所の同僚が2〜3年を費やしてタンパク質の結晶立体構造を明らかにするのを目にしました。それが、今では2~3分でできるようになっています。人工知能プログラム AlphaFoldのおかげです。AlphaFoldは、デミス・ハサビス氏とジョン・ジャンパー(John Jumper)氏によって作成され、2023年9月にラスカー医学研究賞を受賞しています。
AI(人工知能)が、医学史上最も大きな変革をもたらすとするエリック・トポル氏のTED講演です、