6月29日、米Googleはカナダでニュースの対価を報道機関に支払うようIT企業に義務付けるオンラインニュース法(Bill C-18)が議会を通過したことを受けて、Googleがカナダ報道機関との契約を終了し、カナダのニュースコンテンツを表示しないことを発表しました。Googleと同じく支払いを求められることになる Metaも、事前に主張していた通り、カナダでのニュース配信の停止を決定しています。約半年後の法律施行に合わせて検索結果などから国内ニュースへのリンクを削除するということです。
<追記:12/10—–>
- Statement by Minister St-Onge on next steps for the Online News Act(11/29 Canadian Heritage)
- グーグルがオンラインニュース法でカナダ政府と合意、ニュース事業者に年間1億Cドルの財政支援(12/6 JETRO)
Googleは、独立系ニュース事業者や、先住民族や公用語を持つ少数民族のコミュニティーからのニュース事業者など、カナダ全土の幅広いニュース事業者に対して、毎年1億カナダドルの財政支援を行います(額はインフレ率に連動)。これに加え、カナダのニュース事業者のために、トレーニング、事業開発のためのツールやリソース、非営利のジャーナリズムプロジェクトへの支援などの提供を表明しています。
<—–追記:12/10>
- カナダに関するニュース(Googleニュース)
- An update on Canada’s Bill C-18 and our Search and News products(6/29 Kent Walker / Google)
- Bill C-18 (Third Reading)(parl.ca)
カナダ国内の人々がニュースを利用できるようにするオンライン・プラットフォームに関する法律
C-18法案は、パブロ・ロドリゲス(Pablo Rodríguez)文化遺産大臣いわく「ビッグテックの力を抑制することで、(報道機関との)競争条件を平等にする」ためのもので、GoogleやMeta傘下のFacebook、その他ニュースコンテンツへのアクセスを提供する主要プラットフォームに対して、報道機関側が公正な対価の支払いについて、IT大手と団体交渉することを認めるほか、合意できない場合は当局による仲裁手続きに入ることを義務づける内容です。
Googleはカナダの法律について、検索結果に表示されるニュースへの「リンク」に価格を設定するもので、ニュースを制作していないメディアにも適用され得るとして反発しています。「リンク」ではなく「記事の表示」を支払いのベースとし、ニュース制作者のみに適用するよう求めていました。
- A Massive Own-Goal for the Government: Google to Stop News Links in Canada Due to Bill C-18(6/29 Michael Geist) 大規模な政府のオウンゴール
オタワ大学のインターネットおよび電子商取引法のカナダ研究委員長であるマイケル・ガイスト(Michael Geist)教授は、「カナダは、オープンなインターネットの原則を放棄し、政策リスクを真剣に受け止めなかったことで誰もが深刻な代償を支払うことになった。悲惨な政策の世界的事例となりました」と述べています。(上記リンク参照)
- Heritage minister ‘surprised’ by Google news ban; ambassador says U.S. won’t intervene(6/30 CTV News)
Googleのグローバル問題担当プレジデント、ケント・ウォーカー(Kent Walker)氏は、「C-18法案は議会を通過して法律になりますが、依然として実行不可能な内容です」として、「Google検索、ニュース、Discoverからカナダのニュースへのリンクを削除し、Googleニュースショーケースの運営を取りやめる決断を下したことをカナダ政府に通知しました」と述べました。
ウォーカー氏は、Googleニュースショーケースプログラムの一環としてカナダ全土の150社以上のニュースパブリッシャーと契約して、2022年だけで無料で36億回以上リンクして各パブリッシャーが広告や新規購読で収入を得ることを支援したと主張しています。Googleからの紹介トラフィックは、年間2億5,000万カナダドル(約2,732億円)に相当すると評価されているとのことです。