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Dr. Strangelove

相互確証破壊を描いた映画「博士の異常な愛情」と「未知への飛行」

相互確証破壊(Mutual Assured Destruction: MAD)とは、核による先制攻撃を受けても、その報復として絶対的な損害を与えることができる核戦力を保持することによって、核攻撃を抑止するという米ソ冷戦時代の核戦略構想です。1964年公開、スタンリー・キューブリック監督の名作映画「博士の異常な愛情」とシドニー・ルメット監督の「未知への飛行」はともに核戦争をテーマとして、「相互確証破壊」を描いています。いま60年前の名作映画が「核兵器の増強や拡散」、そして「危険性が増大しているAI」に警鐘を鳴らします。

Dr. Strangelove
映画『博士の異常な愛情』1963年公開 鬼才キューブリックが織りなす傑作ブラック・コメディ。/ ソニー・ピクチャーズ(YouTube)

博士の異常な愛情 または私は如何にして心配するのを止めて水爆を愛するようになったか(原題: Dr. Strangelove or: How I Learned to Stop Worrying and Love the Bomb)は、1964年の英国・米国合作のブラックコメディ映画です。キューバ危機によって極限状態に達した冷戦の情勢を背景に、偶発的に核戦争が勃発し、人類滅亡に至るさまを描くブラックコメディ。政府や軍の上層部はほぼ全員が俗物ないし異常者として描かれる風刺劇でもあります。

この作品はピーター・ジョージ(Peter George)の「破滅への二時間(Red Alert)」という小説を原作にしています。当初は小説同様にシリアスなドラマとして脚本を執筆していましたが、キューブリックは次第に「相互確証破壊」の中に喜劇を見出すようになり、脚本をブラックコメディに書き直しています。

この映画は、2000年に最も面白い米国映画のリストで3位にランクイン。1989年、米国議会図書館は「文化的、歴史的、美学的に重要」であるとして、米国国立フィルム登録簿に保存する最初の25作品に選出しています。

1964年公開の米国スリラー映画。原作は Fail-Safe (novel)、シドニー・ルメット氏が監督をしています。Fail Safe(フェイルセーフ)とは、装置の誤操作や誤動作による事故を防ぐための設計手法であり、この映画では安全な待機ポイント、誤った攻撃命令など複数の意味を含んでいます。

Fail-Safe
Fail-Safe – Trailer / Cinema Art(YouTube)

米ソ冷戦時代の米国。カナダ国境に正体不明の飛行物体がレーダースクリーンに現れます。警戒のため飛行していた米国空軍の対ソ爆撃編隊はソ連領最前線の「待機ポイント=フェイル・セイフ地点」に向かい、待機旋回を始めました。ほどなく飛行物体は民間航空機だと判明しましたが、その間に対ソ爆撃編隊はモスクワを核攻撃せよとの暗号指令を受信します。司令部の軍事コンピュータが誤作動を起こしたことによる誤った暗号指令でした。

ソ連側の迎撃部隊によって編隊のうち4機は撃ち落されましたが、1番機だけは攻撃をかわしてモスクワ上空に到達、ついにモスクワに核攻撃が行われてしまいます。米国大統領はソ連の報復による全面核戦争を回避し、ソ連側にモスクワへの核攻撃がコンピュータの誤作動によるものであることを証明するため、驚くべき決断を下します。それは、自軍、つまり米国空軍の爆撃機と核爆弾を用いて、ニューヨークを核攻撃することでした。

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