16世紀、スペインによる植民地化に1世紀にわたって抵抗を続けたマヤのラカンドン・チョル族(Lakandon Chʼol)。彼らが最後の拠点として構え、そして散った伝説の地「白いジャガーの地(Sak-Bahlán)」と思われる遺跡が見つかりました。300年もの間見つけられずにいましたが、米ウィンスロップ大学のブレント・ウッドフィル(Brent Woodfill)博士と、立正大学の白鳥祐子博士が共同で率いる多国籍のプロジェクトチームがその場所を特定しました。
- Localizan la que podría ser la última ciudad de los lacandones rebeldes de Chiapas, Sak-Bahlán(7/24 INAH)

メキシコ国立人類学歴史学研究所(INAH)の報告によると、この発見にはINAH研究者のホスエ・ロサダ・トレド(Josuhé Lozada Toledo)氏の情報分析が大きく役立ったと言います。彼は当時の記録とコンピュータ上で様々な地理空間情報を重ね合わせる地理情報システム(GIS)を用いて予測モデルを作成しました。その結果、モンテス・アスレス生物圏保護区内(Montes Azules Biosphere Reserve)であると予測が立ったそうです。
さらにロサダ・トレド氏は、スペイン人修道士ディエゴ・デ・リバスが1698年に書いた、サク・バーランへ向かう詳細な道中記に注目。それには、サク・バーランはチアパス州を流れるラカントゥン川(Lacantún River)の湾曲部にある平原に位置しており、都市部からラカントゥン川まで兵士たちと4日間歩き、続いてラカントゥン川とパシオン川の合流点まで2日間カヌーで移動したと記述されていた。こうして、生活に必要な荷物を運んでいたことを考慮しながら、遺跡の近似位置が導き出されました。
チームは、現在のメキシコとグアテマラの国境近くにあるハタテ川(Jataté River)とイスカン川(Ixcán River)の合流点で建築遺構を発見しました。これらの遺構は、マヤの建築様式を踏襲しており、サク・バーランに関する当時の記録と一致していました。
- Josuhé Lozada Toledo(Facebook)
ディスカバリーチャンネルの支援により行われた今回の調査は、ドキュメンタリーとして記録されています。またオープンアクセスの学術誌「Revista Chicomoztoc(レヴィスタ・チコモストク)」もこの調査について取り上げています。
チアパス州のジャングルにおける失われた遺跡の発見に地理情報システムを活用することの重要性について論じます。スペインの年代記作家たちの記録に残された民族史的情報のおかげで、彼らが移動した距離と時間に加え、横断した地形の種類、携行した荷物の重量、夜を過ごした場所を考慮することで、彼らの移動経路を再現することが可能となります。
- Modelos predictivos en SIG para la localización de sitios perdidos en la Selva Lacandona: el caso de Sak Bahlán y Nohhaa(8/10 Revista Chicomoztoc)
Josuhé Lozada Toledo, Brent Woodfill, Yuko Shiratori
