歴史の中でまったく異なる文化に同じデザインが繰り返し現れるのはなぜなのでしょうか? 思想家のテリー・ムーア(Terry Moore)氏が、2種類の形が非周期的に限りなく並んでいる「ペンローズ・タイル」を取り上げ、その意味を問います。
写真は現代における傑出した科学者ロジャー・ペンローズ氏です。アインシュタインの一般相対性理論からブラックホールの存在を理論的に示した研究で、2020年にノーベル物理学賞を受賞しています。また、1970年代に数学界で「平面充填」という分野で功績を残しています。
ペンローズ氏のパターンがすごいのは、たった2種類の形から反復することなく、あらゆる方向に限りなく展開していく点です。2種類のタイルで非周期的平面充填ができることは大きな発見だったため「ペンローズ・タイル」と名付けられました。その後、2007年に当時プリンストンの大学院で物理を学んでいたピーター・ルウ(Peter Lu)氏が、休暇で従兄弟とウズベキスタンを訪れた時に14世紀のイスラム神学校でこちらの模様を見つけました。そして、分析をしたところそれは確かに「ペンローズ・タイル」でした。ペンローズ氏が生まれる500年前の建築です。・・(笑)
- Girih tiles(en:Wikipedia)
このすごいパターンは、数学や物理学では知られていましたが、今や芸術や考古学の世界でも取り上げられ、こんな問いが生じています。「このパターンには何が隠されているのか?」 この文様は古代の社会がとても大切にしていて、最も重要な建築に描いたのですから。そこで人類学に答えを求めることにしましょう。
このパターンに隠れた背後の統一性という考え方は、古代世界の様々なところに認められます。エジプトでも、ギリシアでも、オーストラリアでも、中米でも、北米でも、ヨーロッパでも、中東でも見ることができます。現代の西洋だと、この背後の統一性を「神」と呼ぶかもしれませんが、時代によって同じものを指して違う言葉が使われてきました。
この素晴らしいデザインを見ると、単なる装飾ではないことがわかります。これは、その文化に本質的な価値、人々が何を大切にしていたのか、自分や世界や世界の中の自分をどう見ていたかを表しているのです。「建築は石で記された書物」という言葉があります。だから、このすごいデザインを見て、単なる装飾ではないことが解るのです。
それは主張であり、メッセージです。目を向け、耳を傾けてください。過去からの声が聞こえてきますよ。 ありがとうございました(拍手)