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長編児童文学「コタンの口笛」と成瀬巳喜男監督による映画化

石森 延男(いしもり のぶお、1897年6月 – 1987年8月)氏は、札幌市出身の児童文学作家です。1957(昭和22)年、アイヌを主人公とした全2部の異例の長編「コタンの口笛東都書房がベストセラーとなり、第1回未明文学賞、第5回産経児童出版文化賞を受賞しました。この「コタンの口笛」を原作として、1959年に成瀬巳喜男監督により同名で映画化されました。千歳川の畔にあるコタン(アイヌ集落)に暮らす貧しい姉弟は、アイヌだというだけで言われのない嫌がらせを受けます。逆境と闘いながら精一杯に生きてゆく姿を描いています。

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『コタンの口笛』(1959年) / Wikipedia

アイヌに対するさまざまな差別と偏見が描かれます。姉弟が通う中学校で、「あ、犬!」との侮蔑的表現や盗難事件では最初に疑われるなど、いじめ場面も数多くあります。また、当時アイヌの人たちが受けていた差別の根の深さも描かれます。アイヌの理解者だと思っていた和人の校長(志村喬)も、実は心の奥底に差別意識を持っていた事が明らかになります。明治維新後の同化政策家制度からきた差別と偏見、ステレオタイプが浮かび上がります。

成瀬巳喜男監督によると、「全然お客さんのこない作品でした。大人向きか子供向きか、中途半端だったようだ」と語っています。私も初めて観たのですが、大衆娯楽映画としては魅力に欠けるように思います。ただ、現在の「アイヌ施策推進法の見直し」や「多文化・民族共生」を推進するいま、アイヌ児童文学映画として学校や公共施設での上映を是非とも検討すべきです。

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久保賢、宝田明、幸田良子 『芸能画報』1959年2月号、サン出版社 / Wikipedia

2019年に施行したアイヌ施策推進法は5年経過したときに必要に応じて見直すとされています。自見はなこアイヌ施策担当相は、「差別の禁止に関する規定には罰則規定が設けられていないと認識していますが、現時点でなんら法改正について決まっているということではなく、きょう議論をキックオフした」と述べています。国は、秋以降、アイヌの人たちとの意見交換会を開催し、アイヌ施策推進法の見直しに向けた検討を進める方針です。(STVニュースから)

コタンの口笛(東宝DVD) / TOHO, AMAZON
東宝さん、予告編か特別映像を公開してください。お願いします。

AMAZONの作品レビューには、この映画とアイヌ差別問題についての問題提起がされており、興味深く参考になります。一読をお勧めします。

札幌市の南西にある藻岩山ロープウェイ乗り場の隣に、石森父子を顕彰する「石森文学広場」があり、父・石森和男の「われらが愛する北海道」碑と並んで、石森延男文学碑が建てられています。また、札幌市南区の石山南小学校に石森延男文学碑があります。香川県高松市屋島東町にも、かつての教え子たちが建てた句碑があります。

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コタンの口笛(第一部・上) (偕成社文庫 4017) 単行本(ソフトカバー) – 1976/9/1 石森 延男 (著), 鈴木 義治 (イラスト) / AMAZON

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