石森 延男(いしもり のぶお、1897年6月 – 1987年8月)氏は、札幌市出身の児童文学作家です。1957(昭和22)年、アイヌを主人公とした全2部の異例の長編「コタンの口笛」東都書房がベストセラーとなり、第1回未明文学賞、第5回産経児童出版文化賞を受賞しました。この「コタンの口笛」を原作として、1959年に成瀬巳喜男監督により同名で映画化されました。千歳川の畔にあるコタン(アイヌ集落)に暮らす貧しい姉弟は、アイヌだというだけで言われのない嫌がらせを受けます。逆境と闘いながら精一杯に生きてゆく姿を描いています。
アイヌに対するさまざまな差別と偏見が描かれます。姉弟が通う中学校で、「あ、犬!」との侮蔑的表現や盗難事件では最初に疑われるなど、いじめ場面も数多くあります。また、当時アイヌの人たちが受けていた差別の根の深さも描かれます。アイヌの理解者だと思っていた和人の校長(志村喬)も、実は心の奥底に差別意識を持っていた事が明らかになります。明治維新後の同化政策や家制度からきた差別と偏見、ステレオタイプが浮かび上がります。
- 知ること、許すことの大切さ(pdf: 最優秀賞/法務省)
第41回全国中学生人権作文コンテスト中央大会の表彰作品(令和5年)
成瀬巳喜男監督によると、「全然お客さんのこない作品でした。大人向きか子供向きか、中途半端だったようだ」と語っています。私も初めて観たのですが、大衆娯楽映画としては魅力に欠けるように思います。ただ、現在の「アイヌ施策推進法の見直し」や「多文化・民族共生」を推進するいま、アイヌ児童文学映画として学校や公共施設での上映を是非とも検討すべきです。
- 「私たちを観光資源としか見てない…」5年経ったアイヌ施策推進法は「抜け殻のような法律」(5/29 東京新聞)
- アイヌ施策推進法施行後5年 見直しに向け秋以降意見交換 自見アイヌ施策相出席 札幌で会合(7/10放送 STVニュース)
2019年に施行したアイヌ施策推進法は5年経過したときに必要に応じて見直すとされています。自見はなこアイヌ施策担当相は、「差別の禁止に関する規定には罰則規定が設けられていないと認識していますが、現時点でなんら法改正について決まっているということではなく、きょう議論をキックオフした」と述べています。国は、秋以降、アイヌの人たちとの意見交換会を開催し、アイヌ施策推進法の見直しに向けた検討を進める方針です。(STVニュースから)
- コタンの口笛(Kotan no kuchibue)(IMDb) Ratings: 7.3
東宝さん、予告編か特別映像を公開してください。お願いします。
AMAZONの作品レビューには、この映画とアイヌ差別問題についての問題提起がされており、興味深く参考になります。一読をお勧めします。
- コタンの口笛<東宝DVD名作セレクション>(TOHO theater STORE)
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札幌市の南西にある藻岩山ロープウェイ乗り場の隣に、石森父子を顕彰する「石森文学広場」があり、父・石森和男の「われらが愛する北海道」碑と並んで、石森延男文学碑が建てられています。また、札幌市南区の石山南小学校に石森延男文学碑があります。香川県高松市屋島東町にも、かつての教え子たちが建てた句碑があります。